■講演概要
イノベーションとは、社会にとって新しい価値を生み出し、善い未来を創造することです。新しい価値を創造するとは、新しい知識を創造することでもあります。知識はいまや企業にとって最も重要な経営資源であり、その企業にしか創ることができない知識を創造することが企業の存在意義でもあります。
知識の最大の特質は、それが「人が関係性の中で作る資源である」ということです。知識は、そのときの状況や知識を使う人の人的特質(思い、理想、主観、直観、感情など)によって意味や価値が異なってくる資源であり、したがってモノの生産のように生産関数で表すことはできません。より多くのインプットを入れたからといってより多くのアウトプットが期待できるわけではないのです。その意味で「イノベーションの生産性」を理解するためには「人間」を理解することが不可欠です。
知識創造とは、個人の抱いた思いを、他者や環境との間で行われる社会的ダイナミクスの中で正当化し、「真」としていくプロセスです。そのようなプロセスを企業はどのように促進し、多層にわたって知の質を高め、内外に偏在する良質な知を綜合して新しい価値を創り続けていくのか。今回の講演ではそのプロセスについてお話します。
■略歴
中央大学ビジネススクール(大学院戦略経営研究科)教授。一橋大学商学部卒業後、ミシガン大学経営大学院博士号(Ph.D.)を取得。北陸先端科学技術大学院大学准教授を経て現職。
専門分野は知識経営、国際経営戦略、イノベーションマネジメント。著書『流れを経営する』(東洋経済新報社)ほか。
北陸先端科学技術大学院大学客員教授。一般財団法人富士通JAIMS理事。凸版印刷株式会社、エムスリー株式会社社外取締役。